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生活創造建築家 タナベアツシのブログ 2006年10月

アルベロベッロの屋根材の動向

 すっかり更新してませんでした。いろいろな方にアクセスしていただいているのに 大変申し訳ありませんでした。

 今回はアルベロベッロの民家 トゥルッリの屋根材について。

 トゥルッリは 前にも紹介したように全てが現地の石灰岩でできています。基礎も壁も屋根も。。
 屋根は石灰岩の石瓦”キアンカレッレ”を積んでいきます。内側の石灰岩ブロックによって構造を作り(この構造は他の石造とは異なります 後日。)小石で表面を平らにして少しむくる(カーブを描く)ように積んできます。しかもセメントやモルタルのようなもので接着させません。全て石灰岩なのに適材適所、住めるように建築されているのは 本当にすごい!

 屋根材ですが、実はこれ、大きな石灰岩盤の中でも表面でしか取れない石灰岩を使うんです。
 石灰岩はカルシウム分が堆積してできるので 表面の部分はまだ新しい材料です。堆積したばかりの表面石灰岩は圧縮が十分でないためお互い十分くっついていません。つまり石目(層状に割れる部分)があるんです。鑿ひとつで簡単に割れます。



 上の写真、300年前のトゥルッリ群のひとつですが、ひとつひとつの屋根材には石目がちゃーんと見てとれます。職人の経験で積んでいくのでひとつひとつ違った表情を持っています。
 400年前のオリジナルの時代は、建築現場そのものから採取していたそうです。今では掘削場で採ってきます。

 しかし、現実問題、石目のある表面の石灰岩は貴重なものとなっています。掘削場ではキアンカレッレ不足なのです。



 そこで、屋根材はこうやって建築現場にて掘削した際、石目のある屋根材に適した材料は選定してストックしていきます。
 崩れて危なくなったトゥルッリの屋根材や崩壊したトゥルッリの屋根材も丁寧に集められ、次のトゥルッリの修復に使用するため 保管されます。

 それでも足りない場合、岩盤深くの石目のない石を掘り、機械で薄く切断して代用しています。





 石目のある石灰岩は 他の地域(北プーリア州)の掘削場にはあるみたいですが、そこにはトゥルッリの文化はありません。皮肉ですね。

 アルベロベッロ近郊に見られるポツポツと建っているトゥルッリのほとんどはオリジナルの時代のもの(400年前)ではありません(一部の農家は違いますよ)。これらはこのような石目のない新材料で作られていることが多いようです。アルベロベッロのトゥルッロにあこがれて作られているので ”形さえ似ていれば良い”というイタリア人オーナーもいらっしゃる つまり石目のない石でも石灰岩でつくられたトゥルッリなら良いという人たちもいるようです。近郊に住んでいる人たちも 実際あまりトゥルッリについて詳しくないのも現状です。



 これは30年前に葺き替えられたトゥルッロ。石がピシっと揃っています。というか揃いすぎて見えます。土着的な建物から手工業を奪ってしまうととたんに力を失って見えてしまうのは何故でしょう ? これ 実はアルベロベッロ 世界遺産内のトゥルッリです。

 トゥルッロがどうしてこのような形状なのか、プーリア州のこの地しか見られないものなのか、そのことを考えると やはりトゥルッリ誕生の原理を考えることこそが大切に思います。400年前当時にとって、トゥルッロは全てが理にかない、全てに無駄がなく、そして生活そのものを支えてきた ということを忘れてはいけませんね。
 日本の白川郷も 萱(かや)不足だと聞きます。

今は今の生活もあり、昔のトゥルッリもあります。
もっとポジティブな新旧文化の共存を根本的に考えたいものですね
 機械切断の石を使うのも丈夫だし良いこともあるんですけどね。でもお手本にしたいアルベロベッロという町の状況もだんだん変化していると思うと 切ない思いになります。





朽ちフェチ ?

タナベです 
私 建築設計をしているとき、よく考えます。

竣工してから 建物は使われて 使いこなされて 美しくなるように”。
ちょっとくさいですが(苦笑)、いやこれは本当にそう考えてます。
 最近では綺麗で白くてピカピカで またガラスが多用されて斬新な建物 多いですよね。これはこれとして”朽ちていく美しさ”もあるんです。上の建物は竣工時が一番綺麗。これではちっとも面白くないですよね

 使いこなして古くなって でも輝いているラーメン屋さんとか居酒屋さん、好きです。建築家って 実はこういうのが大好きだったりします。ご存知でした?(笑) 
 一方お洒落でも高くてたいしておいしくもないカフェや、メンテナンスフリーとかいうセラミックコートの建売住宅などには全く惹かれない私達。お洒落であっても その建物を愛して使う人がいないと、空間に実がないとねえ。汚いだけだと論外ですが(笑)。


 プーリア アルベロベッロ周辺は 朽ちている建物がたくさん。シビレマス。
 土地に根付いた築2000年以上の建物が朽ちつつもしっかりと残っている! すごいですよね。イタリアに留学する前から 白川郷の民家などの”建築家なき建築””土着的な建築物”が大好きだったので、ここプーリア版”朽ちゆく建物”にもエネルギーを感じざるをえません。

アルベロベッロにはトゥルッリという 三角屋根の民家があります。これは前にも説明しておりますね。
この原型として、キプロ パッギャロ というものがあります。



これです。 かわいい! かわいい中に 昔の生活が現れていて力強い。ここはアドリア海沿いの畑の中にポツリとあります。