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南イタリアのスローライフ
建築修復の仕事
原風景を大切にする
家具やファブリックの購入に、いま一歩踏み出せない・・・そんな方にお薦めです。
 
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豊かな暮らしとは?

常に、”人が暮らすとはどういうことか”、”豊かな生活ってどういうことなのか”考え続けてきました。
 もちろんこれからも続けていかなくてはなりませんが、イタリアを通じて少しだけ整理できたこともあります。
 私は建築を通してヨーロッパや日本を廻る旅をしてきましたが、中でも1998年の南イタリアの一人旅で偶然知り合った建築修復家、Giovanni Veneziano氏(ニーノ)、Antonia Rosato氏(ニネッタママ)夫妻との交流で、アルベロベ ッロのトゥルッリ研究に加え、南イタリアでの設計活動協力に 従事させていただいております。
 建物を建てることは、その中の生活を考え、経験しないと整理できないということ。
建築修復家Giovanni Veneziano氏(ニーノ)は、現存する建物をうまく利用するための意識や技術を、またニネッタママは豊かな家族の絆や南イタリア料理の数々を私に教えてくれました。
ニーノとニネッタママ

暖炉を通して伝わるコミュニケーションの大切さ

暖炉はほとんどどこの家にもあります。
 冬寒い地域では、未だに暖炉は暖房機具として活用されています。南イタリアも意外に冬は寒いのです。
 子供達は幼い時から暖炉の使い方を教えられます。だれかが火を見ています。
南イタリア人のほとんどは、昼ごはん食べに家に帰りますので、一日中、火をつけていられます。
 暖房施設として、暖炉から発する熱は、建物の石に少しずつ蓄えられ、なんとなく暖かい空気になります。それでも少し寒いなと思えば、すぐに暖炉のそばにいけば済みます。寒いので、必ず暖炉の回りでおしゃべりしています。これは家庭のとっておきの中心、コミュニケーションツールなのです。
 暖炉はさらに、調理場としての役割を発揮します。 肉、魚を焼く、なすの網焼き、焼き芋も作ります。栗をごぞっと火にくべていぶる、陶器にスープを入れてあたためる、冷凍していた肉などを解凍する、自分の服やスリッパをあたためる・・・などなど。
 アルベロベッロを歩くと、かすかにBBQのような、けむたくさ〜い、あったか〜い匂いがどこからともなく匂ってきます。これがまたいいんです。温まる火がある場所は人が集まります。
 私はただ暖炉のある家をデザインしたいというのではありません。ただ、人が集まるような豊かな場所をデザインしていきたいものだと感じています。
ニネッタ家の大きな暖炉
暖炉ではじっくり豚の丸焼きもできます
子供が安心して暮らせる住まい

家族のつながりが大きいので、孫達の何人かはいつもニネッタのお家で遊んでいます。一緒に暮らしているわけではありません。ニネッタの5人の子供達は近くに所帯を持って生活しています。
 信頼できる家族・親戚が近くにいると、子供を産んだり育てたりする時に、とても安心できる場所だと感じます。
 子供達が安心して暮らせる住まい。それは同時に豊かな時間の流れる住まいなのですね。
小さい頃から食事の行儀作法も学びます
暖炉の廻りで遊ぶ子供達

ニネッタのスローフード
アルベロベッロはイタリアの”かかと”の中央にあります。ここは夏暑く、冬は零下になるほどの寒暖の厳しい場所です。しかし、この厳しい気候を利用した、オリーブやトマトはおいしく、他野菜もものすごく味があります。木曜日には朝市が立ちます。
 ここは親戚関係(ファミリー)の絆がものすごく強いため、おいしいものやお店では手に入らないものが手に入ります。
 生肉したての豚肉や、自家製の葡萄、オリーブ・トマト・小麦粉・チーズなどなど。毎日毎日、彼女は家族のために料理を作ります。
毎週木曜日の朝市
自宅とは別にキッチン棟があります

キッチン棟で ニネッタのおいしい料理は作られます。
 オレキエッテ。”耳たぶ”という名前のパスタです。小麦粉と熱湯のみでこねていきます。トマトソースはタマネギのみのソース。トマト自体に味があり、シンプルでおいしいのです。チーズは全て自家製です。
 イタリアチーズというと、”パルミジアーノ”とか、”ゴルゴンゾーラ”などが有名ですが、ここには自家製の名もなき”チーズ”があるのです。他にもいくつもプーリア州料理はあります。特にショートパスタが多いようです。
パスタ オレキエッテ作成中
オレキエッテ アル ポモドーロ。
他にも料理はたくさん。
町全体がハーブ園
町にある庭や公園、草むらには、四季を感じる植物がたくさん生えています。なかでも野生のルッコラは黄色い花を咲かせ、菜の花畑のような感じで群生しているのです。
 他にもイタリアンパセリ、バジル、ローズマリー、オレガノ、セージなどなど。もちろんこれは、料理に活かします。
  自然の中に生かされている、と感じることができます。
野生のルッコラ

ワインは自家製。
ワインは 親戚の葡萄畑から仕入れた葡萄をつぶし、自分達でワインを作ります。毎年違う葡萄を吟味し、いろいろと作って試しているみたいです。
 これが本当にうまい!いままで飲んだワインの中で一番フレッシュです。(イタリアのワインも実は防腐剤や酸化防止剤などは含まれており、ニーノ家では ほとんどワインは自家製のものしか飲みません。)
 これも大切なスローライフを実現させる家族内での苦労+趣味なのですね。
 昨年は50リットルの樽を20ほど作っていました。
ニーノ自家製のワイン

スローライフは決して怠惰な生活ではない。
日本人にとって、イタリアの生活は”だらしない、怠惰な”印象があるかもしれません。しかし、いろいろな欠点や不可解な点はあるにしろ、決して怠惰なものばかりではありません。
 彼らはなんと朝5時頃に起床して、家事・簡単な朝食をとります。午前中にほとんど全ての仕事を終えてしまい、午後1時ごろ やっと昼食を取るのです。 
 昼食は2時間ほどゆっくりととります。ニーノは3時ごろからまた職場(現場)に出向き、午後8時頃帰ってきます。 
 すぐに夕食ですが、11時ごろまで団欒をし、次の日のために12時を廻る前に就寝します。怠惰どころか、実はかなりの時間就労し、規則正しく生活をしていることがわかります。
 このような生活は、ニーノのような職人だけでなく、会社務めの方の多くも、このような時間の使い方をされているようです。
 いつ終わるかわからない残業の多い日本の仕事の仕方と比べて、時間をきっちり区切ることで、集中力も維持しているようでした。お互いが、時間の使い方に対して認め合っているということも、過度なストレスを感じさせない方法の一つのようです。
 仕事も、家事も、食事も、時間を豊かに感じ、楽しむこと。これがスローライフだと感じます。